不動産投資において、経費として計上できる項目の一つである減価償却費について、「難しくてよく分からない」という方も多いのではないでしょうか?
初心者からすると言葉自体も固いイメージがあり、取っ付きにくい印象もあると思います。
この記事を読むことで、まず<減価償却費とは何か>の部分を簡単に理解でき、その上で<不動産投資に減価償却費がどう影響するのか>についてもイメージできるようになります。
ぜひ最後まで読み進めてみてください!
不動産投資における減価償却費とは
減価償却費とは、<建物などの購入した価格に基づいて、耐用年数に応じて算出される経費のこと>です。もっと砕いて言うと、建物購入によって少しずつ経費になるお金のことです。
そもそも減価償却って?
減価償却とは、<高額の固定資産などを購入したときの代金を、購入年に一括で経費にしするのではなく、少しずつ分割して経費にしていくルールのこと>です。
例えば1000万円の不動産を購入して、初年度に1000万円を経費として計上するのではなく、50万円ずつ20年間に分けて少しずつ経費にするというようなルールが減価償却というわけです。
なんで減価償却が必要なの?
減価償却は「固定資産は年数が経つごとに劣化したりすることで価値が減っていくので、毎年一定額で分割して経費としていきましょう」というのが本来ですが、不動産経営をしていくうえでも重要となります。
もし減価償却しなければ、不動産購入で1年目から思いっきり赤字になります。これでは正確な毎年の損益通算が表されないですし、金融機関も先が不透明な融資はできないでしょう。
そのために減価償却ルールは必要なのです。
減価償却費の計算方法
減価償却費の計算式は以下のようになります。
建物価格 × 償却率 = 減価償却費
建物価格の計算方法
減価償却費をもとめるには、
建物価格 × 償却率 = 減価償却費
なので「建物価格」の計算方法を解説します。土地の価格を含まない物件価格のことを「建物価格」といいます。
なぜ土地の価格は含まないのかというと、土地は劣化しないからです。劣化しないモノは減価償却できないので、建物価格のみが対象になります。
不動産売買書に建物価格が明記されていれば、その価格を元に減価償却費を求めることができますが、明記されていない場合は、「固定資産税評価額」を使って建物価格を割り出します。
以下に2つの建物価格の計算方法を紹介します。
計算方法① 購入価格×(建物の固定資産税評価額÷物件の固定資産税評価額)
計算方法② 物件購入時に掛かった消費税額×(1.1÷0.1)
このいずれかにあてはめることで、その物件の建物価格が分かります。「固定資産税評価額」は不動産会社に聞けば分かるでしょう。
償却率の求め方(新築物件の場合)
減価償却費をもとめるには、
建物価格 × 償却率 = 減価償却費
なので、建物価格に続いて「償却率」の求め方を解説します。償却率を求めるには、<建物の取得時期>、<建物の種類と耐用年数>を知る必要があります。
新築の場合と中古の場合で償却率は違いますが、新築の償却率の求め方を覚えていれば中古は簡単です。
建物の取得時期
大まかに平成19年3月31日以前に取得したのか、平成19年4月1日以降に取得したのかによって償却率が変わってきます。
建物の種類と耐用年数
木造なのか鉄筋コンクリートなのか等によって耐用年数が変わってきます。例えば木造であれば22年、鉄筋コンクリートであれば47年であることが分かります。
償却率表を見ればお分かりかと思いますが、<建物の取得時期>、<建物の種類と耐用年数>、この2つで新築物件の償却率が求められます。
償却率の求め方(中古の場合)
中古物件の償却率の求め方は、新築物件の償却率の求め方に一手間加えるだけです。
また、中古物件といっても「耐用年数を過ぎた中古物件」と「一部経過した中古物件」によって償却率は変わります。
耐用年数を過ぎた中古物件
耐用年数を過ぎた中古物件の場合は、以下の計算で耐用年数を割り出します。
耐用年数を過ぎた物件 = 耐用年数一覧表の年数 × 0.2
木造であれば、耐用年数は4年(22年×0.2)、鉄筋コンクリートであれば耐用年数は9年(47年×0.2)となります(端数は切り捨て)。
償却率表を見れば分かりますが、要するに建物が古くなるにつれて償却率は上がっていくということです。
一部経過した中古物件
一部経過した中古物件の場合は、以下の計算で耐用年数を割り出します。
一部経過した中古物件 = (法定耐用年数−経過年数)+経過年数×0.2
例えば、20年経過した鉄筋コンクリートで計算すると、
(47-20)+20×0.2=31
耐用年数は31年となり、償却率表を見ると、0.033だということが分かります。
減価償却費が節税になる理由
減価償却費は「実際の支出ではない」ことが節税になる大きな理由です。
他の経費であれば物件購入に伴う初年度の支出は大きくなりますが、2年目以降はあまり経費になりません。
ですが、減価償却費を計上することで実際の支出がなくても節税になるということです。
減価償却費の注意点
減価償却費が高ければ良いわけではない
減価償却費は確かに節税にはなりますが注意点があります。それは「減価償却費を意識し過ぎるのも良くない」という点です。
減価償却費は建物価格と償却率で決まるので、建物価格の割合が高くて、償却率も高くなる古い物件であれば、おのずと減価償却費は高くなります。
不動産投資の本質を見失わない
ですが、やみくもに減価償却費を出せばお得というわけではありません。建物価格が高いというだけで、土地の価格が安い物件が良い物件とは言えないからです。
立地が良くなければ当然売却も難しくなりますし、古い建物であれば修繕費が掛かる可能性も高いです。
要するに、節税をすることが不動産投資の目的ではないということです。
もちろん節税対策になるということは不動産投資のメリットではありますが、「節税にはなったけど全体では赤字」では本末転倒だということを忘れてはいけません。
まとめ
減価償却費は不動産投資において節税効果があります。
ですが、減価償却費をメインとした物件選びが良いというわけではなく、あくまで家賃収入が安定して得られるような物件選びを大前提にしたうえで、減価償却費での節税効果を得ることが重要といえます。